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seiseki squareSSRブログ

2018/05/24

乾いた風


 
 
 数日前、庭で林檎の白い可憐な花を見つけ、イチ子さんが桜と間違えたのも無理はなかった。ゴウルデン・ディリシャスと印度林檎の間に生まれた品種が、桜に似た花を付けたのだ。

「毎年秋には収穫できるんでしょ?」とイチ子さん。

「よほど丹精しないと収穫までは漕ぎ着けられないよ。養生を怠れば残らず野鳥のランチだもの。観賞用として眺めているのが一番良いよ」と説明すると、きみは、いささか不満げに唇をとがらせてたっけ。

 サマーニットの可愛いらしいワンピースに早々と袖を通したイチ子さんが、漆喰で固めた張り出し窓に腰掛け、庭先を指差したのは、梅雨入り前の乾いた風が、その年初めて、颯爽と部屋に吹き込んだ日のことだった。



【James Taylor / Fire and Rain】

 

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