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seiseki squareSSRブログ

2018/05/29

その先の200メートル


 
 
 夏の岬は、西南の風が吹く。

 簡易舗装こそされてはいるものの、その先の緩い上り坂の道幅は狭く、父のサマーハウスの前庭へは小さな車しか乗り入れられなかった。止むなく、200メートル手前・坂下の大清水さんの蜜柑畑の片隅を父が駐車場として借り、ぼくの古いトライアンフもそこに止めた。

 その夏、あるきっかけから頻繁に遊びに来るようになった近所に住む女子高生・水口イチ子とその小さな弟 ----- ぼく達三人が遊びに出かけるとき、当初は駐車場までの200メートルの距離を揃って黙々と歩いていたが、ある日を境にイチ子は、その下りの片道を昔使っていたという古いスケートボードに乗るようになった。
「じゃあ、あとでね。早く来てね」と言って弟とぼくを残し、イチ子のボードが坂道を下って行くノイジーな音を聞くたびに、その『あとで』が、わずか三分後のことなのを、いつもおかしく思ったものだ。

 イチ子達が帰るとき、スケートボードは、駐車場の隅にある蜜柑畑の給水栓に立てかけられてあったりした。



【The La's / There She Goes】

 

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