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seiseki squareSSRブログ

2018/06/15

海鳴りと浜風とスバル360


 
 
 横須賀長井漁港のそばに歴史ある船具屋があって、ぼくは、そこにスウェーデン製のヨット用羅針盤を注文していた。
「注文が何台か溜まったら発注するから気長に待ってもらえますかねぇ」というのは店主の冗談かと思っていたら、本当に半年以上待たされた。

 今朝七時に由比ヶ浜のフリートに着くと、すでに強風注意報が出ていて、ぼくと仲間達は早々と出艇を取り止めた。塩っ気の多い連中ばかりなので、さすがにそそくさと帰ることはなく、みんな今日いち日をどうやって海のそばで過ごすかという相談を始めている。
 そんな折り、構わず出艇しようとしたビギナーの大学生がいて、危ないからと寄ってたかって諦めさせたのが、今朝のちょっとした出来事だった。

 さて、七時半を回って、水口イチ子が、この春に買ったという、とんでもなく古い軽自動車でやってきた。ツー・ストローク発動機の音は、海鳴りや浜風の吹く中でもすぐに聞きわけられた。

 仲間達は、長谷駅の近くの酒屋から生葡萄酒を買ってきて、海を見ながら宴会をしようと決めたようだ。

 ぼくは、やたら排気煙を吐くイチ子の車で長井港へ行ってくるとみんなに宣言した。

                   

 『長井船具』でコンパスと引き換えに支払った67,800円を見て、彼女は大いに驚いた。それ単体ではたいして役にも立たないものに、よくそんな大金を払うもんだということなのだろう。

                  ***

 帰りにイチ子が、衣笠駅の近くに最近気に入っている湯葉とお豆腐を食べさせる店があるから行こうと誘う。
「昼には、まだ大分早いよ。店が開くまで、衣笠山か菖蒲園にでも行こうよ」交差点で信号を待ちながらぼくは答えた。
「うん、いいよ。そうしよう。それとね、秋になって涼しくなったら、ディンギーの練習のない日に大楠山にハイキングに行こうよ」
 イチ子がそうせがんだとき、丁度シグナルが変わり、彼女は、大事なスバル360のアクセルを注意深く踏み込んだのだった。



【The Association / Windy】

 

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