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seiseki squareSSRブログ

2018/06/26

あなたのおソバに


 
 
 蕎麦ッ喰いが高じて、一泊二日で信州に蕎麦食い旅に出かけて行ったことがある。
 到着日の夕飯と翌朝の食事は宿で食べるのは止むを得ないとして、その旅では、長野県内で蕎麦を計八食食べた。

 蕎麦の本場・信州には蕎麦を売る店は電信柱の数ほどあって(うそつけ!)、そんな中でも行列のできる店がある。そういう店には、やはり他店にはない、いくつかの特徴があって、特筆しておきたいのは香川のうどん同様、味の決め手は出汁の差であるということだ。麺の打ち方よりも、出汁にその店の特色が出やすい。

 麺打ちは最近はいい機械があって、トコロテン式に湯の中に蕎麦を押し出して茹で、客に饗する店が多くなってきた。見た目も食感も、昔ながらの手打ち・手切りの店のものとは比較しない方がいいだろう。

 長野県内滞在中に食べた八食は、有名店から駅蕎麦まで多様だったが、やはり素人にもわかる違いは出汁だった。
 とりわけ思い出深いのは、松本駅を通るJR篠ノ井線下りホームの駅蕎麦が有名店に挙げられていて、帰京の列車が別ホームに入線している最中に慌ただしく食べた。やはり、信州そばの特徴である辛汁で、駅蕎麦侮れずの感を一新した。街中に店を構えていないからダメという論法は、もともとなかろう。

 余談になるが、今はどうなったか食べに行ってはいないが、JR立川駅南武線発着ホームの駅蕎麦がかつて話題になっていた。南口開発前の駅前旅館による出店で、以前は立川駅の駅弁を作っていた旅館だ。これは、わざわざ食べに行った。
 駅の立ち食いで他に有名なのは、東海道新幹線下り、名古屋駅ホームのきしめん ----- 今は構内に移ったと聞くが ----- JR退職者のオジサン達によるベンチャーで、やはり出汁取りには予算を惜しまなかったようである。
 もうひとつ、これは最早ないのだが、かつて岡山県宇野と香川県高松とを結んだJR宇高連絡船の船内の立ち食いうどんも名を馳せた。
 個人的には分倍河原駅の立ち食い蕎麦もなつかしい。何度もわざわざ食べに行った。今は、もうない。

 さて、話を戻そう。信州から帰ってきたその足で、夕飯をスクエアの信州蕎麦『武くら』でまたしても蕎麦を喰った。九食目である。正真正銘の信州蕎麦の辛汁で、蕎麦だけを食べに信州へ行こうと考えるなら、その必要はなく、『武くら』で十二分に用が足りる。 

 これ迄、信州蕎麦の辛汁主体の話で来たが、江戸蕎麦の話もしておかないといけないだろう。
 江戸では江戸時代に広まった信州蕎麦であったが、甘く味を付けると高級品という信心が江戸庶民にあって、味醂とか粗目などを加え、甘く作るのが江戸の味というようになっていって、ヘーゲルに言わせるなら次第にアウフヘーベンしていったわけである。
 みたらし団子の甘辛い、あの味が江戸の味の見本である。再び脱線するが、稲荷鮨にせよ、最近は大分薄味になってきてしまったが、南口商店会・明神橋通り『伊勢屋』の売る稲荷鮨は『甘辛い!』と賛否両論があるにせよ、あれはまったく完璧な江戸の稲荷鮨の味である。近い味のものは、最早、上野辺りまで行かないと売ってないのではないか。

 せいせきでは、信州同様の辛汁で蕎麦を喰おうというならスクエアの『武くら』、江戸蕎麦の甘汁で喰おうというなら大栗橋商店会の『大村庵』。辛汁と甘汁の中間の味で喰わせていた南口商店会の加盟店で、さくら通りで暖簾を出していた増田屋は、今はもうない。



【Yun / TSUNAMI】

 

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